愛媛県

卯之町(西予市宇和町)

「卯之町」の名前は、一時期熱中していた吉村昭の小説「長英逃亡」と「ふぉん・しいほるとの娘」で知った。宇和島藩の在郷町、宿場町として発展したが、両小説の舞台として登場するように、何となく文化の香りがするイメージがあり、遠い場所ながら一度訪問したいと思っていた。この町で2013年の「いらかぐみ」オフ会が開かれることになり、ようやく長年の夢がかなった。

卯之町(西予市宇和町)2013.06.08        36×51cm
最近は便利になり、Google地図の航空写真とストリートビューにより、まだ行ったことがない町の様子をかなり詳しく知ることができる。出発前に何回か卯之町の地図をチェックしたら、うまくいけば大好きな俯瞰が描けそうである。午後遅めに内子町から卯之町へ移動、事前調査に基づき、卯之町駅から町全体を俯瞰できる高台へ迷うことなく直行した。目の前にこの町のシンボルである「開明学校」の建物があり、宿泊する宿も見える。

シーボルトの娘・イネは卯之町に二宮敬作を訪ね、その指導でわが国初の女医としての第一歩を踏み出した。町内の二宮敬作住居跡。 蘭学者・高野長英は全国逃亡の途中、同じシーボルトの弟子だった二宮敬作を頼り、卯之町にも隠れ住んだ。

卯之町・松屋旅館付近(西予市宇和町)2013.06.09        F6
「いらかぐみ」のオフ会は、中町(なかのちょう)通りという古い町並みの中にある老舗旅館・松屋旅館が会場となった。旅館の建物は1809年の建築というから築200年を超えており、食事で出される漬物は江戸時代から続く糠床で漬けたものというから驚きである。1年ぶりのオフ会は素晴らしい部屋と豪華な料理で大いに盛り上がった。今回のスケッチ旅行は梅雨入りにもかかわらず晴れの日が続き、ずいぶん助かった。しかし、この日は朝起きるとシトシトと雨。やむなく向かい側の軒下に入り込み、松屋旅館付近の町並みをスケッチした。七ちょめさんの「松屋旅館」宿泊リポートがこちらに。

いらかぐみメンバーに見守られながらスケッチ開始。(Yasukoさん撮影) 「雨は止まないかなあ。止みそうもないなあ」と空をにらむ。(万訪さん撮影)

卯之町・開明学校入口(西予市宇和町)2013.06.09        F6 
朝、雨の中を「いらかぐみ」のメンバーといっしょに町を一巡し、私は特に雨にぬれずに描ける場所をチェックした。古い町並みの北西に開明学校、民具館といった施設や光教寺というお寺などが集中している。それらへの入り口が石畳の坂道になっていて、ちょっと構図が面白く、中町通りに面した町家の軒下へ入り込むと雨が避けられるので、ここを選んでスケッチした。突き当りが光教寺。

卯之町・開明学校(西予市宇和町)2013.06.09        F6
卯之町は魅力的な町だったが、何しろ遠方なので再びスケッチする機会もなさそう。このため雨の中で撮った写真から「開明学校」の建物を描いてみた。開明学校は私塾の申義堂を前身とし、1872年(明治5年)の学制発布に伴い小学校として開校、1882年に現存する校舎が竣工した。窓枠をアーチ状にするなどした擬洋風建築で、現在は教育資料館として使われ、国の重要文化財に指定されている。背景の山に墓地が見えるが、前の日、この場所から卯之町の俯瞰を描いた。

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