広島県  
 
 
  尾道(尾道市)  
 
 
  「坂の町」、「寺の町」、「文学や映画の町」などの顔がある尾道へ一度、スケッチに行きたいと思いながら、なかなか実現しなかった。俯瞰スケッチを好むようになってからなおさら行きたいという気分が高まっていたが、テレビで「春のような温かさが続く」との天気予報をみて、思い立って出かけた。町並みを歩いてみて、「猫」「木造3階建て」「狭い路地」「尾道ラーメン」などのキーワードもあるのを知った。  
 
 
   
  「尾道ガウディハウス」(尾道市三軒家町)2018.03.13     F6  
 
朝、倉敷から尾道へ。ただ、前日が月曜日で大原美術館が休館だったため、Fさんは美術館を訪問、後ほど合流することにして先発した。尾道では下調べしていた「尾道ガウディハウス」へ直行した。尾道駅北口を出てすぐの山手の急斜面に建っている。1933(昭和8)年に和泉家別邸として建てられたが、長く空き家になっていたものをNPO法人尾道空家再生プロジェクトの手で修復工事が進んでいる。スペインの建築家アントニ・ガウディの作風を連想するため、この呼び方となったとそうで、2013年に国の登録有形文化財となった。現地へ行ってみると、右の写真のようにブルーシートが掛かっている。しかし、ネットに写真がたくさん掲載されているのを知っていたので、シートの部分を白く残して描き、帰宅後、いかにもシートが掛かってなかったように仕上げた。




 
 
 
   
  三軒家町の坂道(尾道市三軒家町)2018.03.13     F6   
  尾道駅から「ガウディハウス」へ向かう途中でふと覗いた細い道がとても魅力的に思えた。まだ街全体の様子はよく分からないが、山に向かって伸びる石段に「いかにも尾道らしい風景ではないか」と感じた。スケッチしていると、ベテランらしい絵描きさんが2人でやってこられ、選択眼が間違っていなかったと確信した。帰宅後チェックしたら、尾道在住の「いらかぐみ」メンバー辰巳屋さんもこの坂道を取り上げられていた。スケッチ中にFさんから電話があり、中断して駅の出口まで迎えに行った。  
 
 
   
  天寧寺三重塔と尾道水道(尾道市東土堂町)2018.03.13     36×51㎝  
 
尾道本通り商店街で昼食に名物の尾道ラーメンを食べた後、とりあえず千光寺山ロープウエーで頂上まで登った。千光寺の周辺にはあちらこちらの有名画家のスケッチポイントという標識が建っている。そのうちの1つ「平山郁夫画伯のスケッチポイント」が千光寺の下のある天寧寺三重塔の背後にあった。塔を近景にして中景に尾道の市街地が広がり、遠景に尾道水道と尾道大橋がみえるというまさに尾道を代表する景観である。俯瞰好きとしてはぜひここで描かねばならないと、膨大な数の家々に挑んだ。

私の右手が平山郁夫画伯のスケッチポイントの碑。後で碑に印刷してある画伯の絵を確かめたら、実際のスケッチポイントはもう少し左で、画面の中央寄りに塔を持ってきた結果、背景の家数はうんと少なかった。
 
 
 
   
  「みはらし亭」(尾道市東土堂町)2018.03.13     F6  
  千光寺への参道沿いに奇抜なデザインの建物があり、「みはらし亭」との看板が出ていた。帰宅後、ネットで調べたら、1921(大正10)年に別荘として建てられ、その後、旅館として使われていたが、ここ30年ほどは空家となっていた。2013年には国の登録有形文化財となり、NPO法人尾道空家再生プロジェクトにより、2016年にゲストハウスとして営業を再開したという。名前の通り、いかにもみはらしの良さそうな宿泊施設だが、ホームページのアクセス案内には「石段約360段を上がる」とあった。絵の上の方に丸く描いてあるのが千光寺境内の巨岩。  
 
 
   
  「ポンポン岩」から(尾道市東土堂町)2018.03.13     F6   
 
急坂の町なので、一度坂を下ると二度と上りたくないが、かねてポンポン岩のところから眺めが最高と聞いていたので、千光寺まで戻りさらに坂道を上ってその岩まで行った。正式には鼓岩というが、たたくとポンポンという音がするからポンポン岩の通称ができたとか。大阪城築城の時にこの岩を運びだそうとして付けたノミの跡が並んでいる。ここにも有名画家スケッチポイントの碑があり、なるほど眺めが良い。向島の造船関連工場がアクセントになっている。

岩の上は快適なスケッチ環境だったが、もう少し遅い季節なら「老人の干物」ができること間違いなし。岩をたたくための槌が置いてあり、スケッチ中、いろんな人が岩をたたく音がずっと聞こえていた。
 
 
 
   
  向島から「千光寺」付近(尾道市)2018.03.14     36×51㎝   
  尾道の2日目。朝一番で市街地の対岸にある向島へ渡った。向島との間には3本のフェリー航路があり、いずれも頻繁に船が出ている。そのうち一番東の尾道渡船の乗り場には「日本一短い船旅」という看板が出ており、渡船料は100円。向島側の船着き場近くから正面に千光寺が見え、絶好のスケッチポイントであった。  
 
 
   
  向島から尾道大橋方向(尾道市)2018.03.14     F6  
 
向島は思っていたより賑やかな町で、フェリー乗り場にはパチンコ屋まであった。そのそばから東・尾道大橋方向を眺めると、中小の造船所や関連工場が並んでおり、クレーンが林立して面白い景観である。波止場に陣取ると、日射しは眩しく暑いほどだが、潮風が心地良く、極めて快適な気分でスケッチした。





 
 
 
   
  土堂町1丁目の路地(尾道市)2018.03.14     F6   
  向島から戻ってきて、フェリー乗り場のすぐそばで東西に通じる路地が気に入ってスケッチブックを広げた。いろんな顔を持つ尾道だが、町を歩いてみて「木造3階建て」と「狭い路地」もキーワードの1つであると思った。この路地もその両方が揃った典型的な存在である。突き当たりに小さな神社があり、その鳥居が建つ南北の路地には「浮御堂小路」との標識が建っていたが、こちらの路地は名前が分からない。「いらかぐみ」の辰巳屋さんに問い合わせてみた。「この辺りの路地は尾道を代表する景観です」とのお墨付きをいただいたが、「残念ながら名前は分かりません」とのことだった。  
 
 
   
  東土堂町の長屋(尾道市)2018.03.14     F6  
  山が海まで迫る狭い尾道市街地の中心部を山陽本線と国道2号線が貫いている。だから家々は海側では3階建てとなり、山側は斜面に追い上げられる結果となったのであろう。千光寺新道が山陽本線のガードを潜ったところに、線路沿いの狭い土地をうまく活用した長屋があった。西側のお寺の墓地から眺めた構図が面白いので1枚。長屋にどんな店があるのか知らないが、観光客らしい人が時々入っていく。  
 
 
   
  落城間近「尾道城」(尾道市三軒家町、西土堂町)2018.03.14     36×51㎝   
 
尾道駅から見上げると山の上に「尾道城」が建っている。手前の斜面に建ち並ぶ家々の様子も面白いので、最後の1枚にすることを到着時から決めていた。スケッチしていると、下校してきた土堂小学校の生徒にドッと囲まれた(→)。その中に2、3年生らしいかわいい2人の女の子がいて、熱心に絵を覗き込んできた。ちょうど城の建物を描いているとき「城が取り壊しになるからここを描いているのですか」という。聞けば、尾道のシンボルにと商工会の人が建てたが、近く解体されるとか。低学年らしくない的確な説明である。どうせ歴史的裏付けのない観光施設だろうと思っていたが「落城間近」とは知らなかった。そう言われれば、片方のシャチホコが取れている。帰宅後調べてみると、1964年に建てられたが、1992年から閉鎖されたままという。女の子は「姫路城をモデルにした」と説明してくれたが、モデルは弘前城らしいのがウィキペディアの記述との唯一の相違点であった。

 
 
 
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