愛知県

有松(名古屋市緑区)

有松は旧東海道の池鯉鮒(知立)宿と鳴海宿の中間に茶屋集落の「間の宿」(あいのしゅく)として造られたが、茶屋集落としては限界があり、耕地も少なかったため、尾張藩の奨励により副業として絞り染めを始めた。地の利もありこの絞り業が発展した。1784年(天明4年)に大火があり、それを機に瓦葺き、塗り込め造りの町家が建てられ、豪壮な商家の町並みはその時にできた。都市化の波で旧東海道の宿場町の町並みはほとんど残っていないが、その中で有松は奇跡的に往時の姿を現在に伝えている。

歌川広重の東海道五十三次の版画の中に「鳴海 名物有松絞」の1枚がある(→)。鳴海・有松の絞り製品は街道名物として人気を集めていたそうで、当時の有松はこんな様子だったようだ。



有松・小塚家あたり(名古屋市緑区有松)    2014.11.24       36×51cm
町並み探索グループ「いらかぐみ」メンバーのNさんが「生まれ変わる歴史的建造物」という本を日刊工業新聞社から出版した。そのお祝いを兼ねてメンバーが有松に集まった。正午から小宴を催すことになっており、私はFさんとともに早めに行ってスケッチすることにした。とりあえず町並みの一番西にある小塚家(絵の右側=名古屋市指定文化財)あたりで1枚。坂になった旧東海道の道筋が緩やかにカーブしており、絵になる構図である。

有松・服部家あたり(名古屋市緑区有松)    2014.11.24       F6
自宅近くから京都駅行の直行バス(所要39分)があるため、新幹線、名鉄と乗り継いで、有松には2時間弱で到着した。「明日香へ車で行くのと時間的にはそう変わらない」という印象で、9時半にはすでにスケッチを始めていた。しかし1枚目に手間取ったため、正午に始まる小宴に間にあうよう、急いで2枚目を描いた。町並みの中でひときわ目を引くのが「井桁屋」の屋号で絞り染め業を営んでいる服部家(愛知県指定文化財)である。01年にも同じアングルで描いているが、やはりここは外せない。





有松・服部家あたりA(名古屋市緑区有松)    2014.11.24       F6 
服部家の主屋の隣に土蔵が2棟並んでいる。2棟のうち、右側の蔵は所有者が異なるようだが、土蔵側からのアングルもぜひ描きたかった。しかし小宴の開始時間が近づいており、スケッチする時間がないため、写真を撮って帰宅後絵にした。

小宴は同じ街道筋にある料理屋「やまと」で開催した。この料理屋の建物(→)も絵になると思ったが、写真を撮るだけにとどめた。参加したいらかぐみメンバーと出会うのは、春の島根県・温泉津温泉以来。話が弾み、昼間なのに酒も進んだ。




有松・竹田家あたり(名古屋市緑区有松)    2014.11.24       F6 
Nさんの出版祝い会終了後、参加メンバーはほろ酔い気分で有松の町並み探索に出かけたが、私はもう1軒、気になる建物があり、それを描くことにした。名古屋市指定文化財の竹田家で、黒漆喰壁の土蔵がいかにも存在感がある。絞り製品製造卸の(株)竹田嘉兵衛商店として営業している。

有松(名古屋市緑区)01・06・16 F8
Fさんとともに愛知県にスケッチに出かけ、足助から有松に回った。有松は絞り染めの町として有名だが、私の頭には立派なうだつのある「服部家」がインプットされていた。有松・鳴海絞会館に車を止めて早速、その向かいにある服部家に挑んだ。Fさんが退屈しないためには、町並み以外に何かがほしいが、この町には絞り染めの店がたくさんあり、有松山車会館もあって理想的。Fさんが端から店を巡っているうちに絵はでき上がってしまった。絵を描く場所にも深い軒があって、涼しく描けた。






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