奈良県

椿井、平等寺、三里(平群町)

平群(へぐり)はローカル電車がのんびり走るありふれたベッドタウンだが、古事記や日本書紀、万葉集にも登場するやたらに歴史の古い町である。斑鳩町との境にある矢田丘陵の山裾には南から椿井(つばい)、平等寺、三里といった集落が並んでいる。椿井の集落内には「椿井井戸」と呼ばれる古井戸があり、聖徳太子にからむ言い伝えもある。そんな話を聞くと、何でもない田舎風景が何となく由緒ありそうにも思えてくる。

椿井の紅葉(平群町)2015.12.05     36×51cm
この日も良い天気だったので紅葉狙いで平群町へ出かけた。矢田丘陵の西側斜面にある椿井の家並みが気に入って、何回かスケッチに行っているが、国道168号の歩道から家並みと向き合ってみると何だか様子がおかしい。椿井はキクなど花卉類の栽培が盛んで、以前、集落の前面に広がる田んぼはきれいに耕され、ビニールハウスも建っていた。しかし今回行ってみると全体にセイタカアワダチソウなどの雑草が茂り、いかにも耕作放棄地の様相である。片隅に大手ホームセンターの看板があったので、やがてここに店舗ができるのかなと納得してスケッチした。帰宅後ネットで調べると、詳細はよく分からないが、どうやら進出計画が大幅に遅れているらしい。(16年1月初めにこの場所を通ると、工事が始まり、土が積まれていました。もうこの風景は描くことができません)

三里(平群町)    2015.02.19      25×41p
この日は生駒市の菜畑駅の近くで描いた後、国道168号線を少し南へ走って平群町の三里へ行った。起伏のある地形に不規則に並ぶ家々の間を歩いていると「三里古墳」へ出た。近くに長屋王と吉備内親王の墓もあり、長い歴史のある地域らしい。風が少し冷たかったが、三里の家並みの向こうに生駒山が見える場所を選んで1枚描いた。二つ折れになったおばあさんが畑作業にやってきた。

椿井・名残の紅葉@(平群町)09.12.14    F6
紅葉が残っているかもしれないと思って平群町の椿井へ行った。申し分のない快晴で、風は少し冷たいものの、厚着をして出かけたこともあり、快適なスケッチだった。集落のすぐそばまで近づいて取りあえず1枚。

椿井・名残の紅葉A(平群町)09.12.14     36×51cm
背景の山は西向きなので午後の方が陽が当って紅葉が冴える。それを期待して2枚目は国道168号線の道端に座って描いた。国道は土手の上にあるため、少し視線が高くなって、階段状に建ち並ぶ山裾の家並みがよく見える。こういう風景を前にして家1軒1軒を丁寧に描いていくのが楽しい。

椿井・名残の紅葉B(平群町)09.12.14     36×51cm
国道を少し北へ移動して、もう1枚似たような風景を描いた。この絵の右端の家並みが上のAの左端とつながる。このあたりの田んぼでは花卉類の栽培が盛んなようで、作業をしている人の姿も結構目立つ。

平等寺(平群町)09.12.14   F6
この日は寒くないので、道の駅の正面にある平等寺でもう1枚描いた。下にある@の絵とほぼ同じ場所である。

椿井B(平群町)07.11.08    36×51cm
下の絵を描きに行った時「国道からの遠景も面白いなあ」と印象に残っていた。もう少し遅ければ紅葉が盛りになるのだが、いかにも中途半端な季節だった。

椿井A(平群町)07.08.30 36×51cm
8月最終週になって暑さは峠を超えたが、今度は雨模様の日が続く。30日も朝から土砂降りだったが、昼ごろ晴れ上がったので、気分転換にスケッチに行った。椿井では一度遠景をスケッチしたことがあるが、今回は日差しを避けて集落内のメーンストリートへ。スケッチ中、大正13年生まれという近所のおばあさんが暇つぶしにずっと付き合ってくれた。この村の昔の様子、ご亭主の話など話は尽きない。

椿井@(平群町)05.06.20 36×51cm
初めて椿井へ行ったが日影がまったくない。アングルより日陰優先と、栗や柿の木が植わっている畑に勝手に入り込んでスケッチしていると、ご近所の人がやってきて「山の上に中世には椿井城があったんですよ」と教えてくれた。

平等寺@(平群町)05.06.20    36×51cm
近くにある「道の駅」で一息入れて、平群町での2枚目に挑んだ。平等寺という集落である。遠くから見ると大和棟造の妻壁が二つ並んでいて絵になりそう。ところが近づくと画面に納めにくい。しかも日差しをさえぎる場所がない。暑さに閉口しながらスケッチしていると、買い物に行って帰ってきたご婦人が「冷たいものでも買ってきてあげたらよかったね」と慰めの言葉を投げかけてくれた。

平群町椣原・元山上口駅付近へ
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