奈良県

今井町その2(橿原市)

今井町は東西600メートル、南北300メートルの地域に約600軒の民家があるが、うち500軒ほどが伝統的な町屋で、重文指定民家が8軒もある。環濠の遺構のほか昔のままの町割りも残っている。「海の堺、陸の今井」とか「大和の金は今井に七分」と言われるほどの財力を持つ商業都市だった。
(その2には、スケッチ時期が古い絵を掲載しています)
 
 
   
   「今西家」あたり@(橿原市今井町)09.08.28    36×51cm  
  半年ぶりに今井町へ出かける気になった。まだ暑い日が続く。今井町なら東西南北どちらを向いても絵になるので、日影の確保には苦労しないという読みである。今井町の代表的な存在である「今西家」を正面から描いたことがないため、一度挑戦してみようと思った。しかし、表側からでは変化もなく、日影もない。結局以前にも描いたことがある裏側へ回った。たまにカメラを担いだ人が来るぐらいで、スケッチするための空間といった感じである。  
 
 
     
   今井町25(橿原市)09.08.28    F6  
  今井町の東側の部分は町並み修景が進み、にぎわいもあるが、「今西家」のある西の方は、空き家や空き地も目立つ。私自身、古い町並みに手を入れ過ぎることには多少批判的な意見を持っているものの、放置すればあっという間に、町並みが崩れてしまうのもまた事実。ということで、空き地が目立ちマンションも見えて、あまり今井町らしくない西の方の一画で1枚描いてみた。  
 
 
     
   「中橋家」あたり@(橿原市今井町)09.08.28    36×51cm  
  今井町のメーンストリート・御堂筋にやってくると、傷みの激しい称念寺にカバーがかかっている。修復工事をしている様子もないので、地震などで物が落ちないようにして、道行く人の安全を確保するためのカバーかもしれない。お寺の斜め前にある重要文化財指定の「中橋家住宅」(右手前)を描いたことがないので、この日の3枚目に選んだ。その向かい側、無造作に自販機が置かれたお宅をよく見ると、自販機の後ろ側は造りの丁寧な格子になっている。「さすがは今井町」と妙なところで感心した。  
 
 
     
   今井町22(橿原市) 09.02.12      36×51cm  
  この日、称念寺の前の「御堂筋」へ行くと、町の世話役らしい人が寄ってきて「あと2、3年でここも電柱を撤去しますよ。それに称念寺もいよいよ解体修理です」という。それならと、その称念寺を入れて電柱のある御堂筋を描くことにした。今井町の中心的存在であるこのお寺の傷み方は悲惨である。確かめてはいないが、解体修理が決まったとは良かった。  

     
  今井町23(橿原市) 09.02.12   36×51cm  
  この日の2枚目は日向を優先、南北の通りで描くことにした。向こうからやってきた人が「ここは皆さんよくスケッチされます」と声をかけてこられた。ひょっと見ると、町内にお住まいで、今井町を油彩で描き続けている画家のN氏だった。私の個展にも来ていただいたことがある。「町並みが整備されて、描きたくなる場所が少なくなりました」ともおっしゃる。「同じように感じているのは私だけではなかった」と意を強くした。  
 
 
     
   今井町24(橿原市) 09.02.12   F6        
  「御堂筋」の一本南の通りを「南尊坊通」呼ぶ。人通りもあまりなく静かな通りだが、そこにカステラ店とお休み処の「六斎堂」がある。今井町にスケッチに行った時はここでコーヒータイムをとることが多い。私と同年輩のオーナーご夫妻がいつも温かく迎えてくれる。この日の3枚目は、せっかくだからその南尊坊通で「六斎堂」の暖簾と幟を入れて描くことにした。  

今井町20(橿原市) 08.10.25   36×51cm
しばらくぶりの今井町である。今井町へ行くと、いつも「ここにしようか」「あそこにしようか」と迷ううちに時間が過ぎることが多いので、この日は、深く考えないでスケッチを開始した。どこでも絵になる町ともいえる。今井町はもともと外敵への防御を重視した町割りになっており、町内の道はすべて途中で折れ曲がっているが、唯一、スケッチしたこの道だけが今井小学校のところから南北に町を通り抜けている。

     
   今井町21(橿原市) 08.10.25     F6  
  案内所でもらえる今井町マップにも南北の通り名は記載されておらず、唯一、南北に町を通り抜けているこの通り名前は知らない。突き当たりにJR桜井線のガードが見通せるあたりまで行くと、観光客の姿もなく、道端でスケッチしていると家の中から「生活音」まで聞こえてくる。しかし、家々の造りは重厚で、今井町の本来の姿を残している場所かもしれない。道幅は極端に狭いが生活道路だから車がすり抜けるように通る。そのたびに身をかわす必要があるが、迷惑をかけているのはもちろんスケッチしている私の方である。  
 
 
今井町19(奈良県橿原市)07.12.26  36×51cm
今井町は室町時代に「称念寺」を中心とした寺内町として発展した。「一度は描いてみるか」とその称念寺に焦点を当てた。称念寺の前の道・御堂筋は現役の商店も多く、電柱も残っていて生活感がある。手前に自動車が止まっていたのでアクセントになるかなと描き始めたとたん、セールスマンの車だったらしく、商談が終わってどこかへ走り去ってしまった。”残像”で描いたがどことなく不自然。鉛筆を丁寧に使ったので、色はうんと抑えてみた。

今井町18(奈良県橿原市)07.12.26  36×51cm
7年の描き納めにと今井町へ行った。よく晴れて暖かだったが、日向で描ける河合酒造を選んだ。この日はご当主自ら暮れの大掃除。戸障子を水洗いしながら「最近は酒造りも自由競争になり、中小酒屋は厳しい」とこぼしておられた。

今井町17(橿原市)06.09.02 36×51cm
この町でも、大好きな電柱のある町並みが減り、スケッチポイント探しに苦労するようになった。町内は今、改造ブームらしく、あちらこちらにシートをかぶせた家が目立つ。このポイントでも正面の土蔵の左側の家が修復中だったので、絵ではシートを取り去り、工事を終わらせておいた。

今井町16(橿原市)06.09.02 36×51cm
久しぶりに本格的町並みが描きたくなり、今井町へ。昼近い時間帯には日陰を探すのに苦労をする。町内にある順明寺の門に陣取って、この日の1枚目は、その門前の町並みを描くことにした。アングルより日陰優先である。境内から涼しい風も吹いてくる。「極楽の余り風」という言い方を祖母から聞いたことがあるが、お寺さんが恵んでくれるありがたい風だった。

今井町15(橿原市)06.03.24 36×51cm
半年ぶりに今井町へ行き、描き残した思いがしていた重要文化財の高木家から河合家を見通すポイントをスケッチした。爽やかな晴天だったが、日陰はまだ寒かった。

今井町14(橿原市)05.09.22 36×51cm
河合酒造の酒蔵の向かいに庶民的な町屋が並んでいるのを見つけて描いた。このところ町内では住み手のいなくなった空き家を建て替えた新築の建物が目立つ。外部から移住する人がけっこうあるらしい。古くて絵になる建物が姿を消すのは残念なことだが、町の活気を保つにはいいことだ。今回スケッチしたお宅(左手前)も空き家のように見えた。

今井町13(奈良県橿原市)05.07.27 36×51cm
この日、今井町へ行ったのはこの町でカステラ店を営んでおられる方から掲示板への書き込みがあったのがきっかけ。下の「今井町11」の絵に関心を持っていただいた。豊田家など重要文化財の建物が並ぶ称念寺前の「御堂筋」でスケッチした後、一筋南の通りにあるその店「六斎堂」へ立ち寄ってみた。長く演劇をやっておられたが、ご夫妻で修行され03年にカステラ工房と喫茶店を開かれたという。しっとりとしたカステラがおいしかった。「六斎堂」のページへ

今井町11(橿原市)04・03・14 36×51cm
悠彩会のスケッチ会が今井町で開かれ、ほぼ1年ぶりにこの町で描いた。カメラを抱えた観光客の姿が目立つ。数少ない町なかの食堂は予約客で満員。古い町並みだけでこれだけの観光客を集めているのは「さすが今井町」との思いがした。

今井町12(橿原市)04・03・14 F8
がんばって2枚目に挑戦。同じ通りで後ろを振り返ったアングル。電柱がある風景が好きなため、描きたくなる場所が限られてきた。

今井町10(橿原市)02・12・15 F8
この町に数ある重文指定の建物のうち一番立派なのは、西の端にある今西家。その裏にある春日神社内の旧常福寺の通用門のところから描いた。白漆喰壁が日の光に輝いていた。一番、今井町らしいポイントだと思っている。

今井町9(橿原市)02・02・11 F8
建国記念の日に明日香にでも行こうとこのあたりまで来たが、橿原神宮へ向かう車で大渋滞。やむなく今井町へ入った。町の東の端、西光寺横の生活臭のある場所を探して描き始めたが、いきなり激しい雪。途中で諦めて、翌週出直した。

今井町8(橿原市)01・07・01 36×51cm
アルシュの粗目でこの町に挑んだが、当然細かい表現ができない。しかも暑い。気分が乗らないまま終わった。

今井町7(橿原市)01・07・01 F8
町がきれいになって、描く場所を探すのに苦労をするようになった。数少ない「きたない」場所を探した。電柱が中途半端に近代的なものになったのがいただけない。

町の東の方にある河合酒造(上品寺屋)の建物がやはり一番目につく。この家だけでも何回も挑戦している。ちょうど向かいが駐車スペースになっており、建物全体が見渡せるのがよい。


今井町5(橿原市)93・03・21 F8

同じ建物を1990年に描いたもの。


今井町1(橿原市)90・10 F4

今井町6(橿原市)93・04・10 F8

今井町4(橿原市)93・03・21 F8
このころは1ミリペン1本で描いて、色は着けていない絵が多い。上の絵が4月10日、この絵が3月21日に描いたもの。いかにたびたび出かけていたかが分かる。

旧常福寺の通用門を額縁代わりにした構図で描いてみた。寺の裏に公民館があってそこで絵画教室を開いていた人と話し込んだことを覚えている。生徒の子供は机の上の「柿」を描かされており「外に出て描けばよいのに」と思ったものだ。


今井町3(橿原市)92・12・05 F8

重文指定の家はそのまま保存されているが、かつては町なかに絵にしたような普通の民家がたくさんあった。最近、次第に姿を消している。


            今井町2(橿原市)90・10 F4

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