奈良県
	壺阪道（高取町）
	高取城址へ行ったことがある。残っているのは石垣だけだが、それがかえって歴史を感じさせる。そのふもとに広がる高取の町は城下町であり、大和の薬売りのふるさとであり、壺阪寺の門前町とも言える多彩な顔を持つ。近鉄・壺阪山駅近くから国道１６９号線に並行した旧街道があり、それに沿った観覚寺、下土佐、上土佐、下子島、清水谷といった地区にをつないで武家屋敷や薬を扱う商家の古い町並みが延々と続いている。札の辻という交差点から壺阪寺へ向かう道は「壺阪道」とも呼ぶようである。
	壺阪道の薬屋（高取町下子島）１９．０９．０５　　　　Ｆ６
	９月度の浪漫会スケッチ会が奈良県高取町で開かれた。浪漫会スケッチ会は７、８月が休みなので３ヵ月ぶり。集合場所の近鉄・壺阪山駅までは結構時間がかかるが、それでも１２人の何となく懐かしい顔が揃った。駅のすぐ近くから土佐街道の古い町並みが始まるが、残念なことにスケッチが出来る日陰が見当たらない。札の辻を経て壺阪道へ入り、もうすぐ町並みが途切れるというところでようやく日陰を見つけた。高取町では何枚も描いているが、この場所は初めて。赤いトタン屋根の家とその手前の薬屋さんの店舗がカーブした坂道に建ち並ぶ様子が面白い。スケッチしていると、道の右側にある住宅設備店のご主人が出てきて「昔、水彩画をやっていたんですが・・・」などと話かけてこられ、話が弾んだ。
	下子島�C（高取町）１９．０９．０５　　　　３６×５１�p
	浪漫会スケッチ会の２枚目。壺阪道で描いたあと、スケッチポイントを捜しながら小嶋神社を経て、下子島集落の中を通る自動車道へ出た。一列に立派な家が並んでいる。道が真っ直ぐであまり面白みはないが、何より日陰が確保できるので２枚目に選んだ。突き当たりのカーブミラーが見えるところが壺阪道。スケッチ中はご覧のようによく晴れ上がっていたが、鉛筆描きが終わったところで、ぽつんと雨。と思う間もなくザアーときた。慌てて今描いていた家の玄関先に逃げ込ませてもらった。しばらく止みそうにないので、本格的に雨宿りが出来る「街の駅」へ移動中、あちらこちらの軒下で仲間の皆さんが雨を避けていた。
	小嶋神社から（高取町下子島）　　 　２０１５．０９．２６　　　　２８×４６cm
	土佐街道の「札の辻」から壺阪道に曲がり、坂を上ったあたりに「小嶋神社」というお宮がある。その神社から棚田の向こうに下子島地区の家並みが見える。かつてこのあたりでスケッチした時、描いてみたいと思っていた場所なので、横長のスケッチブックを広げた。目の前の畔の彼岸花が雑草とともに切り倒されていたが、季節ものなので復元しておいた。
	小嶋神社参道（高取町下子島）　　 　２０１５．０９．２６　　　　F６
	壺阪寺へ向かう壺阪道に面した信楽寺という小さなお寺に、浄瑠璃「壺阪霊験記」の主役「お里沢市」の墓がある。そのお寺の横の細い道を入ると小嶋神社へ至る。神社付近で秋らしい棚田風景を描いた後、壺阪道へ戻りながら振り返ると、道の両側にある土壁の民家が面白い。まだ時間も早いので、もう１枚描いた。左手前の石垣のところに電柱があったが、私としては珍しく電柱を省いておいた。（２０１９年９月にここを訪れると、左側の家は真新しいプレハブ住宅となっていた）
	下子島�B（高取町）０７．０６．２１　３６×５１ｃｍ
	高取でのスケッチは下の絵の日付を見ると６年ぶりである。一番下の絵からは１５年ぶりになる。見ていただくとお分かりのように、３回ともほぼ同じ場所で描いている。近所のご婦人に「いい町並みですね」と声をかけると「確かに古い家並みが続いているが、お店が一軒もなくてとても不便なんですよ」という。そういわれてみると、この長い町並みに商店がほとんどない。逆にいうと、それが古い町並みが残った理由かもしれない。家々に竹筒を利用して花が植えてあり、この町の人の温かいもてなしの心を感じた。
	清水谷（高取町）０７．０６．２１　　　　　　　Ｆ６
	壺阪寺に向かう長い町並みを日陰を探しながら歩いていて、清水谷地区で絵になりそうな横道を見つけた。プロパンガスのボンベや消火器、道端に止められた軽自動車など小物の配置が面白い。足の下を小川が流れ、そよ風が気持ちよかった。
	下子島�A（高取町）０１・０９・１５　Ｆ８
	城下町の雰囲気の残る下土佐の「札の辻」跡から壺阪寺に向けて、起伏のある細い道の両側に煙出しを付けた古い家並みがどこまでも続いている。絵は逆に坂の上から札の辻の方向を見た。
	下子島�@（高取町）９２・０７・１０　Ｆ８
	上の絵とほぼ同じ場所から描いた絵である。上の絵ではカーブミラーの手前の家が近代的な建物に建て替えられて、町並みとしては魅力が半減している。この時は武家屋敷の長屋門も描いたが、ボツ。
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